パスタの種類って?
パスタの種類というと「形」が違う、というのが一番にひらめく。
大きい小さい、太い細い、長い短い、それにちょっと特殊な形をしてたりと多種多様でちょっと目が回る。
もう少し違った角度からパスタを見てみると、他にもパスタを分類する方法がある。
もちろん形状の違いもその一つであり、恐らくはこんな分類方法があるんじゃないかと思う。
- 調理法による分類
- パスタをいかにして調理するかという観点で分けてみると、パスタ・アル・フォルノ(pasta al forno)、パスタ・イン・ブロード(pasta in brodo)、パスタ・アシュッタ(pasta asciutta)の三つに分けることができよう。
まずパスタ・アル・フォルノ。フォルノ(forno)とはオーブンや窯のことを意味しており、「~al forno」というと「オーブンで焼いた~」という具合になる。
ラザニアやカネロニなどパスタを焼く料理のこと。
次にパスタ・イン・ブロードだけど、ブロード(brodo)なんかは料理に詳しい人なら必ず耳にしたことはあると思うが、スープや煮出し汁のこと。
パスタ・イン・ブロードとはスープに入れたパスタとなる。茹で上げるというより、そのままスープの具としてパスタを用いる調理法である。
最後にこれが一番馴染みがあるだろう、パスタ・アシュッタ。アシュット(asciutto)とは「乾いた、水気のない」という形容詞。
パスタを茹でてから、水気を切ってからソースなどに絡めるのがパスタ・アシュッタだ。 - 乾燥か生か
- 乾燥パスタ(pasta secca)は長期保存のためにパスタを乾燥させたもので、現在では市販のパッケージに包まれた工業製品が主流。
生パスタ(pasta fresca)は文字通り乾燥させていないもので、その歴史は古い。
最近は製品としてもあるが、家庭で作る手打ちパスタなどが主力。 - ダイス(鋳型)の種類
- ほとんどの工業製品パスタは穴のあいた型(これをダイスないし鋳型という)から生地を押し出して作り、穴の形などによって様々な個性的な形が作られている。
このあたりまで来るとマニアな世界だが、このダイス(鋳型)の材質によってブロンズダイスとテフロンダイス又はルヴィダ(ruvida)とリシャ(liscia)などといった言葉で区別することがある。
ブロンズダイスは青銅などの金属で作られており、古くから使われている。摩擦が大きいので押し出したパスタの表面はザラザラとしている。
ルヴィダ(ruvida)とは「ざらざらした」という意味。
最近ではルヴィダタイプというキャッチコピーを掲げた製品すら見受けられる。
テフロンダイスはバリラ社によって開発され、ダイスが磨耗しにくく摩擦も少ないのでパスタの表面はツルツルとした仕上がりになる。
リシャ(liscia)とは「滑らかな」という意味。
日本のメーカーはほとんどがこのテフロンダイスを使用しており、リシャタイプが主流。
ルヴィダとリシャとどちらが良いのかは賛否両論あるのだが、一般的にルヴィダは表面がザラザラしているのでソースとの絡みが良いといわれているが、パスタの網目構造の緻密さに欠けてパスタの旨味が茹でているときに流れやすく、そのためアルデンテに茹で上げるのが難しいとも言われている。
一方、リシャは表面が滑らかなのでソースとは絡みにくく、オイル系などのあっさり系に向いていると言われている。パスタの網目構造はルヴィダのものより緻密になり、茹でているときにパスタは崩れにくいのでルヴィダよりはアルデンテを作りやすいとも言える。
といっても、この辺はめちゃくちゃ微妙な世界なので。
私はどうしているかというと、スパゲッティに限りルヴィダのものとリシャのものを常備しており、ソースや気分によって使い分けております。(ほとんど気分だけど) - 形状による分類
- パスタの種類というと、これが一番分かりやすい。なんたって見た目が違うんだから。
日本農林規格(JAS規格)では数値的に分類しているが、イタリアでは特に数値による形状分類は定めていない。
むしろ地方やメーカーによって名前はまちまちで、同じ大きさ形のものもまったく違う名前で売られていることも珍しくない。
この形状によるパスタの種類は約500種以上(誰が数えたのか知らんが)あると言われており、一つ一つ取り上げるのは不可能だし、あまり意味がないだろうから、とりあえず有名どころの数種を以下に取り上げていくことにしよう。
またパスタの種類は分かりやすくロングパスタとショートパスタとに分けて説明される場合が多いので、ここでも同様に2タイプに分けて説明することにする。
ロングパスタ
その名の通り長い麺状のパスタ。
板状のラザニアやリボン状にまとまったフェットチーネのようなパスタもロングパスタとして紹介することにする。
蕎麦やうどんなどの麺文化に親しみのある日本人からするとロングパスタは大変親しみやすいはずである。
ほとんどがその太さや断面の形状によって名称を区別する場合が多い。
- spaghetti
- スパゲッティ。
イタリア語の紐を意味するspagoが語源。
古くからあるものの、スパゲッティという名前が付いたのは工業生産が始まってからで、名称としては新しい部類。
日本ではもっとも有名なパスタで、もっとも親しみのあるパスタだろう。
よく「スパゲティー」という日本語を見かけるが、イタリア語の発音からいくと「スパゲッティ」が正しい。
日本農林規格(JAS)は「1.2mm以上の太さの棒状、または2.5mm未満の管状」と規定しており、細めのスパゲッティーニや管状のブカティーニにもスパゲッティに含んでしまっている。
一般には断面が円形で太さ1.6mm~1.9mm前後の棒状のもの。
トマトソースからクリームソース、オイル系のあっさりしたソースなど色んなソースに合わせやすいオールマイティなヤツなので、是非とも常備しておきたい。 - spaghettini
- スパゲッティーニ。
一般的にスパゲッティ呼ばれるものよりも細く、太さ1.2mm~1.6mm前後のもののことを言うが、スパゲッティと混同する場合もある。
また、スパゲッティのなかで細いもの太いものとに分けたとき、とくに細いものを言い、太いものはスパゲットーニ(spaghettoni)と呼ばれる。
細いスパゲッティーニは汁気の多いあっさりしたソースや、オイル系などに適している。 - vermicelli
- ヴェルミチェッリ。
イタリア語で細長い虫(ミミズなどのウジ虫)を意味するvermeがその名前の由来。
日本農林規格(JAS)によると「1.2mm未満の棒状」とされているが、太さ1.0mm~1.2mm前後の棒状のものを呼ぶのが一般的だ。
「ヴァーミセリ」と読む場合もあるが、それは英語読みである。
細いヴェルミチェッリは軽いオイル系のソースやあっさりしたスープの浮き身に適している。 - capelline
- カペリーニ。
太さ1.0mm~1.1mm前後の極細のロングパスタ。1.0mm以下のものもこう呼ぶ場合もある。
イタリア語で髪の毛を意味するcapelloからの名称。
特に細いので、スープに使う場合が多い。最近では夏場に冷たいパスタとして使う場合もある。 - capelli d’angelo
- カペッリ・ダンジェロ。
カペリーニ同様に極細のロングパスタ。棒状ではなく、まるで即席麺のように一塊ごとに丸く成形されたものがほとんどだ。
名前は直訳すると天使(angelo)の髪の毛(capelli)と言う意味。
とくにカペリーニと区別するわけでもないようで、メーカーによってはカペリーニと名付けられて販売されている。
使い方はカペリーニ同様にスープなどに使われる。 - pappardelle
- パッパルデッレ。
その幅が20mm前後にもなる平麺(きし麺状)。
その語源となるpappareとはイタリア語でたくさん食べるという意味らしいが、なぜその名前がついたのかは不明だ。
平麺タイプのロングパスタは主にその幅の太さによって名称を区別する場合が多いが、日本農林規格(JAS)では平麺タイプのものはすべて「ヌードル」と命名しているらしい。
平麺タイプのロングパスタは主にクリーム系のソースがよく合う。また、ボローニャ風と呼ばれるいわゆるミートソースなどにもピッタリあう。 - tagliatelle
- タッリアテッレ。
切るという意味のtagliareをその名の由来とする幅が5mmから10mm前後の平麺タイプのパスタで、このパスタが作られ始めたのはかなり古い。
小麦粉を卵で練ったものが一般的で、棒状のものもあるが、リボン状にひとまとまりにされたものが多く出回っている。ほうれん草やその他の野菜系を練り込んだものも数多くある。
タッリアテッレとは、イタリア北部で主に呼ばれる名称で、中部から南部に下るとフェットチーネ(fettucine)と呼ばれる。
また、その幅が狭くなるとタッリオリーニ(tagliolini)と呼ばれる。 - fettucine
- フェットチーネ。
タッリアテッレと同意。タッリアテッレがイタリア北部での名称で、イタリア中部から南部ではフェットチーネと呼ばれる。 - zite
- ツィーテ。
英語名ではロングマカロニと呼ばれ、その名の通り直径が5mmから8mm前後の管状のロングパスタ。
通常のマカロニサイズに切り取り、グラタンに使うことが多い。 - bucatini
- ブカティーニ。
ツィーテを細くしたもので、直径が2mmから3mm前後の管状パスタ。
語源であるbucaとは穴と言う意味。濃厚なソースによく適している。 - linguine
- リングイーネ。
語源であるlinguaは舌と言う意味で、断面が楕円形をしたロングパスタ。
バジリコと松の実を使ったペスト・アッラ・ジェノヴェーゼ、いわゆるジェノヴァ風ではこのリングイーネを使う場合が多い。 - lasagnette ricce
- ラザニェッテ・リッチェ。
ricceとは縮れのことで、幅が10mmから15mm前後のギザギザの平麺タイプのパスタ。 - lasagne
- ラザーニェ。
板状のパスタで、日本では「ラザニア」と呼ばれるが、イタリア語の発音でいくとラザーニェである。
その形状がすでに料理名となっており、ラザニアは料理名だと誤解されるが、実はパスタの形状名である。
古くは手打ちの生パスタが主であったが、現在では乾燥物が主流。 - chitarra
- キタッラ。
chitarraはイタリア語でギターのこと。19世紀の中ごろにアブルッツォ州のラクイラが起源といわれている。木箱にギターのように弦を張り、その上に伸ばした生地を押し当てて、パスタを麺状に切って作る。そのため麺の断面が正方形をしているのが特徴。子羊の煮込みのソースで頂くのが伝統的らしい。
ショートパスタ
ショートパスタはソースの絡み具合や形成のしやすさを考えたもの、キャラクターや文字など形を楽しむものと多種多様だ。
日本ではスパゲッティのようなロングパスタが人気であるが、パスタのなかではショートパスタのほうが種類も豊富だ。
その形は我々の身近にある物を表現したものが多く、ショートパスタの個性もパスタの楽しみのひとつ。
- maccheroni
- マッケローニ。
直径が3mm~5mmほどの円筒状のショートパスタ。
マカロニとして呼ばれるが、マカロニ(macaroni)とは英語名である。
日本農林規格(JAS)では「2.5mm以上の太さの管状、またはその他の形状」と広義である。
日本ではサラダやグラタンに使用されることが多いが、トマトソースやクリームソースなどとも相性が良く、その利用法は幅広い。 - rigatoni
- リガトーニ。
イタリア語ですじと言う意味のrigaがその名前の由来で、表面にすじの入った直径8mm~15mm前後の筒状のショートパスタ。
ソースの絡みを良くするために表面にすじが入ってるのが特徴。トマトソース、クリームソース、肉類などのわりと重いソースと相性が良い。 - maniche
- マニケ。
イタリア語で袖を意味する言葉。太さが20mm~30mmほどのかなり太い円筒状のパスタで、筒の中に肉や野菜など詰め物をして調理することが多い。 - penne
- ペンネ。
円筒状の両端をペン先のように斜めにカットしたもの。イタリア語でペンのことをpennaと言うが、penneは複数形である。
ペンネのなかにも表面が滑らかなものと、すじが入ったものがあるが、すじの入ったペンネを特にペンネ・リガーテ(penne rigate)と言う。
ペンネといえば、唐辛子入りの辛いトマトソースのペンネ・アラビアータ(penne all’arrabbiata)が有名。 - farfalle
- ファルファッレ。
蝶の形をしており、その名も蝶の意味。
薄い部分は柔らかであるのに、中心部分は歯ごたえが残る独特の食感が楽しめる。
トマトソース、オイル系、クリームソースなど様々な味で楽しめる。
特に小さい物をファルファッリーネ(farfalline)と言ったりする。 - conchiglie
- コンキッリェ。
イタリア語で貝殻の意味。
表面はまさに貝殻のようにすじがあり、大きさは10mm~20mmのものが主流。
その料理法は豊富で、サラダとして登場することもあれば、トマトやクリームソースを絡めたり、煮込み料理に利用される。 - fusilli
- フジッリ。
螺旋状の形をしたショートパスタ。語源であるfusoはイタリア語で紡錘(糸を紡ぐ道具)と言う意味。
日本ではマッケローニと並びよく見かけ、英語名のカールやクルルと言った名称でも知られる。
ドレッシングやマヨネーズであえたサラダとして登場する機会が多く、他にもオイル系などその使い道は数多い。 - spirale
- スピラーレ。
イタリア語で螺旋状の形という意味。フジッリの別名。 - cavatappi
- カヴァタッピ。
筒状のパスタを螺旋状にねじった形をしている。その名の意味はイタリア語で栓抜きという意味。 - cappelletti
- カッペッレッティ。
イタリア語で小さい帽子という意味。野菜が練りこまれたいわゆるカラーパスタが豊富。主にスープの浮き身として使ったり、煮込み料理に使う。 - lumachine
- ルマキーネ。
その名はイタリア語でカタツムリを意味するlumacaが語源で、その名の通りカタツムリのような形。
といっても、手作り当時のそれはまさにカタツムリそのものだったが、現在では機械による生産が主となり、厳密にはカタツムリの形ではなくなってきた。
料理法はマッケローニ同様で、使い道は豊富。 - ruote
- ルオーテ。
車輪の形状をしている。英語名では「ホイール」として知られ、日本では英語名のほうが一般的だ。
トマトやクリームなどのソースと相性が良い。 - risoni
- リソーニ。
米、イタリア語ではrisoの形をしたパスタ。その大きさ、形はまさに米である。スープに利用するのがほとんど。 - semini
- セミーニ。
リソーニが米ならば、セミーニは種子。リソーニよりも長細く尖っている。利用法はリソーニと同じ。 - orecchiette
- オレッキエッテ。
耳たぶという意味のパスタ。
その名の通り、まるで耳たぶのような形をしている。
生パスタの生地を丸くして、親指の腹で押してへこませて作るプーリア州のパスタ。
ブロッコリーを使ったオイル系の料理が有名。 - gnocchi
- ニョッキ。
ショートパスタのなかではその起源は古く、ショートパスタの元祖とも言われる。
ニョッキの名前はこぶというイタリア語に由来する。
当初、ニョッキはパンと牛乳、卵などで作られていたが、現在ではジャガイモと小麦粉で作られることが一般的だ。
特にジャガイモと小麦粉という決まりはなく、フィレンツェではほうれん草を練りこんだもするし、また他のイモ類やカボチャなどを使う場合もある。
ジャガイモのニョッキは比較的簡単に作れるので、是非一度チャレンジして頂きたい。
- ravioli
- ラヴィオリ。
大きさが30mm前後の四角形をした詰め物入りの生パスタ。
詰め物は地方の数だけあると言ってもいいくらい多彩で、肉やチーズ、野菜などを使う。
イタリアは特に地元の産物を大切にしているので、その具材も地方の特産物を利用する傾向にある。
スープの浮き身として使ったり、ソースを和えてオーブンで焼いたりする。