パスタの正しい食べ方

パスタの正しい食べ方

正しい食べ方とは言っても、あまり形式にとらわれるのもどうかと私は思う。 高級リストランテならともかく、気軽に入れるトラットリア的(トラットリア:大衆食堂の意味)なお店では形式にこだわらず楽しく食事が出来れば良い。 さらに自宅で食べるのであれば、よっぽど行儀が悪くない限りマナーなんぞ気にすることもないはずだ。 しかし、知っておくだけでも話題にはなるし、なんだかエラそうな優越感さえ手に入れることができるかも知れない(笑)

というわけで、「パスタの食べ方」について考察してみることにする。

手か、フォークか、それとも箸か

手でパスタを食べる図 17世紀頃のイタリアでは庶民はパスタを手で掴んで食べていたそうだ。 幻のパスタといわれるカンパーニャ州ナポリのヴォイエロ(Voiello)のパスタには、ピエロ「プルチネッラ」が手掴みでパスタを食べる姿がパッケージのデザインとして用いられているくらいだ。 これこそが元祖・パスタの食べ方である。

パスタをフォークで食べるきっかけとなったのは、パスタ好きであった当時のナポリ国王フェルディナンド4世(Ferdinando IV)が宮廷の晩餐会に自分の好きなパスタ料理を出せないか、と考えたところから始まる。 大切なお客さんに自分の大好物をぜひ召し上がっていただこうというワケだった。 そこで料理長のジョヴァンニ・スパダッチーノ(Giovanni Spadaccino)に命じて、もともとは料理を取り分けるために使われていたフォークを食器として使わせたそうだ。 このときに技術者のチェーザレ・スパダッチーニ(Cesare Spadaccini)が尖った3本歯のフォークを口に入れても安全で、よりパスタを食べやすくなるように4本歯に改良したといわれている。 なるほど、4本歯か・・・・・しかし、私が普段使ってるフォークって3本歯なんですよねえ。
ちなみに名前がスパゲッティに似ているが、まったく関係ない。

さてはて、フォークでパスタを食べるというのはイタリアでもそうらしい。 しかし、スパゲッティのようなロングパスタをフォークと一緒にスプーンを併用してパスタを食べる姿をよく目撃する。 フォークで軽く引き上げて、それをスプーンの上でくるくると丸めてパクっと頂くあの光景だ。 この食べ方が正しくもあるし、邪道だという人も多数いるがどちらも私は正論だと思う。 ちなみに本場イタリアではスプーンを併用して食べるかというと、厳密にはフォークだけで食べるという話である。 まずはフォークで一口ほどの量のスパゲッティを引き上げて、それを皿の端っこでくるくるっと丸めてパクッと頂くのがイタリア流だという。 そんなイタリアではスプーンを使うのは子供だけらしいのだ。 もちろん一概に子供だけとは言えないだろうけど、圧倒的に「フォークだけ派」が多い。
スプーンを使うという発想がどこからやって来たのかは知らないが、日本においてスプーンを併用するというスタイルはよく見られる光景なので不思議ではない。 この私も「スプーンを使う派」の一人である。 古くは手で食べていたものが時代とともにフォークへと進化していったのだから、今の時代においてスプーンを使うというスタイルがあったとしてもそれは正論だし、イタリアではスプーンは使わないんだから使わないというのも正論なのである。

そんななか、ハウス食品(株)は先ごろ「お箸でパスタ」という2種類のレトルトパスタソースを新発売させた。 言うなれば「和風」のパスタソースで、別にお箸で食べないとダメというワケでもないが、お箸で頂いても違和感のない和風な仕上がりだという主張なのかも知れない。
また、全国チェーンでもあるパスタ専門店「洋麺屋・五右衛門」ではおもむろに割り箸が置かれてる。というか、フォークもないので割り箸でスパゲッティを食べるしかないという独自路線を突っ走ってる。 逆にそれがその店の個性でもあるので、いわゆるありきたりな店よりは印象に残る。 今回は「食べ方」の考察なのでこれ以上は触れないでおくとしよう。

そういえば「お箸の国の人だもの」とは、どこかで聞いたことのあるフレーズ。 まったくの余談だが、そんな箸文化のニッポンにはお箸に関する御法度が数多くあるのでちょっとピックアップしておくことにする。

お箸に関するご法度
こじ箸盛り付けられた料理を上から取るんじゃなくて、箸でかきまわして好物を探り出すこと。
迷い箸どれにしようかと料理の上をあちこちと箸を動かすこと。
持ち箸箸を持った手で食器をもつこと。
探り箸汁物などで、かき混ぜて中身を探ること。
刺し箸料理を箸で突き刺して食べること。
涙箸箸から汁をぽたぽたとたらすこと。
ねぶり箸箸についた物を口で舐めて取ること。
かき箸器に直接口を当てて、箸で料理を口の中にかき込むこと。
込み箸頬張ったものを箸で口の中に押し込むこと。
叩き箸おかわりを催促するときなど、食器を箸で叩くこと。
空箸箸を料理につけておきながら食べないで箸を置くこと。
振り箸箸についた汁を振り落とすこと。
くわえ箸口で箸を咥えたまま、器を持つこと。
受け箸箸を持ったまま、おかわりをすること。
寄せ箸箸を使って食器を手前に寄せること。
渡し箸箸を食器の上に渡して置くこと。このように置くことは「もう要らない」という意味。
指し箸箸で人を指すこと。
箸渡し箸で挟んだ料理を別の箸で取ること。つまり、箸と箸とで料理をやり取りすること。
二人箸同じ料理を二人同時に箸で挟むこと。
仏箸ご飯の上に箸を突き刺すこと。これは亡くなった人にご飯を供えるときに箸を立てるため。

と、こんなにもある。中には、こんなことしないだろうというものもあるし、知らず知らずのうちにやってるものもある。 で、誰がこんなの考えたんだろう。
さて、ここは「パスタの食べ方」の話なのだから箸の作法はこれくらいにしておくとする。

箸の作法についでは、パスタの作法。
スパゲッティ類を食べる時の基本はフォークで麺を巻き取ることに始まるのだが、イタリアではフォークを時計と反対回りにフォークを回すと不幸になるといわれているらしいのだ。 これを知る前の私は思いっきり時計と逆に回してた・・・。
っていうか、これを信じてるワケじゃないんだけど、こんなの知ってしまうと気になって仕方ない。 当時は意識的に時計回りにフォークを回転させてたのですが、最近では時計回りで慣れちゃったのでもう安心。 さあ、幸せよ、やって来い。

そんなこんなでサラッと軽く書くつもりが結構長くなってしまったではないか。 ここまで書いておいて「食べ方」の作法にこだわるわけでもないし、強要するものでもない。 食事をするという行為はある種「楽しみ」のひとつに他ならない。 大人数でワイワイと語り合いながら食事をするという、形式にこだわらないのもある意味イタリアらしさなのだから。 箸で食べようが、もちろん手で食べようが私はいっこうに構わないと思う。 でも、私は「フォークとスプーン派」なんですけどね。