パスタ料理の名前あれこれ

パスタ料理の名前

パスタを食べれる店が次々と現れ、かつての2大スパゲッティ「ナポリタン」と「ミートソース」が影をひそめつつある今日この頃。
カルボナーラ、ペペロンチーノ、ペスカトーレなどメジャーなパスタ料理は今では知っていて当たり前の世の中になりつつある。
ところがやっぱり日本人はカタカナにめっぽう弱い。
それどころか、パスタ料理に付けられるような名前はイタリア語なので、さらに分かり難いときたもんだ。
というわけで、パスタ屋で見かけるカタカナ料理名称を軽く解説しようと思う。
これで明日からあなたも「俺は知ってるんだぜ」という優越感にひたり、パスタを食べながら大いに語ってやれるはず。
が、ハマりすぎて私のようになると、逆に相手がひいてしまうこともあるので注意が必要。
さて、パスタ料理の名前を説明するにあたり、以下のように分かりやすく3つに分類してみることにした。
(勿論、これは私が説明しやすいように「名前」で勝手に分類したものである)

○○風型
俗に「○○風」と呼ばれるもの。
その言葉の意味からどういう料理か想像できるものもあれば、まったくイメージが繋がらないものまで。
地名型
イタリア人に言わすとイタリア料理というものは存在せず、「ローマ料理」だとか「ナポリ料理」というように郷土料理が存在するのだと言う。
なんとも地元びいきなイタリア人らしい考えだが、地名が付く料理は日本でも数多くある。
その地方で誕生したのだから、その地方の名前が付くとはなんとも安直でわかりやすい。
直訳型
日本ではパスタ料理に付けられる名前だと思いがちだが、実は使っている具材などをイタリア語にしているだけという部類。
イタリア語の意味を知っていれば、何が入っているのか分かるので実に親切。

○○風型

パスタ料理でよく見かけるタイプだが、本来の意味を知ったときに「そうなんだ」と目から鱗が落ちることもある。
本来の意味を知っても、これのどこが「○○風」なのかさっぱり理解できないものもあるが、それはそれ、誰かがそう言ったんだから、言ったもん勝ち。
いまどきの言葉でいうと「○○系」・・・いや、これも既に古い気がしてきた今日この頃。

alla carbonara
カルボナーラ。
炭焼きのことを carbonaio と言い alla carbonara炭焼き風という意味。
ベーコン、卵、チーズで和えたものに黒コショウを振りかける。
もともとは、ラツィオ州(Lazio)のローマ(Roma)の郷土料理で、日本でもカルボナーラは人気のあるパスタ料理のひとつ。
炭焼き風の名前の由来は、炭焼き職人が手についた炭を黒コショウに見立てたとか、炭焼き小屋で保存食となっていたベーコンや卵だけで作ったのがはじまりだとか、諸説あるがどうも確信を持てなさそう。
やはり黒コショウを炭に例えているのはまず間違いないと思われる。 
alla puttanesca
プッタネスカ。
イタリア語で puttana というと娼婦のことを意味し、alla puttanesca娼婦風とも言われる、トマト、アンチョビ、黒オリーブ、ケイパー(ケッパー)を使ったソース。
数あるパスタ料理の名前でもっとも謎の多い名前だと私は思う。
ある本によると「娼婦が客引きに使うくらい美味しい」とか、また別の本では「娼婦の家にでもあるアンビョビと黒オリーブ、ケイパーを使ったもの」などまったく根拠がない。 
all’arrabiata
アラビアータ。
arrabiato とは「怒っている」という意味の形容詞で他には「熱狂的な、猛烈な」という意味もあり、イタリア料理では all’arrabiata というと唐辛子を使ったという意味合いになる。
一般的にはアラビアータは唐辛子を使った辛いトマトソースのことを言う。
パスタにはペンネがやはり相性抜群ですよね。 
alla boscaiola
ボスカイオーラ。
bosco とは森のことで、alla boscaiola は木こり風と訳されることが多いが、正しくは「森の~」と訳す方がニュアンスとしては正しい。
森で取れるキノコ類を使った料理をボスカイオーラと言うのだが、なぜか日本のレシピにはキノコ類とツナを合わせたものが多く。ツナが切り株を模したものというのもたまに聞かれるが、これはあとから取ってつけた話で真実ではない。ツナよりも、パンチェッタやサルシッチャなどの肉類を合わせるほうがイタリアのレシピに多く見られる。
ソースはトマトでもクリームでも関係なく、単にキノコを使ったものという意味合いである。 
alla cacciatora
カチャトーラ。
caccia は狩りという意味で、cacciatore は猟師を意味する。
alla cacciatora猟師風という意味になるが、何がどうなれば猟師風なのかは料理人任せなような気がし、主に鶏や豚、仔羊などの肉料理に多く使われる。
alla contadina
コンタディーナ。
contadino で農夫、農民のことを意味し、alla contadina農家風とか田舎風などと言われる。
野菜とソーセージを合わせたものを指すようなのだが、中にはソーセージ系が登場しないレシピもいくつかあった。
all’ortolana
オルトラーナ。
orto は菜園、野菜畑、ortolano で野菜を作る人、又は「菜園の」という意味になり、all’ortolana菜園風と言われる。
野菜のみを使ったものを言う。
alla pescatora
ペスカトーレ。
pesca は魚釣りのことで、pescatore は釣り人や漁師のことを言う。alla pescatora漁師風という意味。
言うまでもなくペスカトーレの名前は日本でも有名なパスタ料理のひとつで、魚介類を使った料理に使う言葉である。
どうもトマトソースというイメージが強いようだが、魚介類を使っていればペスカトーレと呼ぶことができ、トマトソースというわけではない。 
alla marinara
マリナーラ。
mare は海のこと。marinaro は「海の上の」とか「船乗り」という意味になる。
海の上なのに alla marinara はアンチョビ入りのトマトソースのことを指す。
またピッツァにもよく使われる名前で pizza alla marinara はトマトソース、アンチョビ、オレガノ、ニンニクを使ったピッツァのことを言う。

地名型

その地方で誕生した料理だから、その地名を付ける・・・とは分かりやすいのか分かりにくいのか。
もっともイタリアに限らず、日本でも地名を料理につけることは多い。
例えば、私が今住んでいる兵庫県明石市の「明石焼き」など。
普通のタコ焼きの生地よりも卵を多く使い、ふんわりと焼き上げる。ソースではなく出汁につけて食べるのが明石焼きだが、地元の人は「たまご焼き」と言ったりもする。
(この記事の執筆時は明石に住んでいました。現在は引っ越して、別のところに隠れ住んでいます)

alla bolognese
ボロネーゼ。
エミリア・ロマーニャ州(Emilia Romagna)の州都ボローニャ(Bologna)風
日本で言うところのミートソースのことだが、ボローニャ風はタッリアテッレやパッパルデッレと言った幅の広い手打ちパスタで頂くことが多い。
ボローニャ風という言葉から、ミートソースを salsa di bolognese と呼ぶこともある。
またはミートソースや肉を煮込んで作ったソースをラグー(ragu)と呼び、ボローニャ風ラグー(ragu alla bolognese)などと呼ぶこともある。 
alla genovese
ジェノベーゼ。
2001年にサミットが開かれた都市、リーグリア州(Liguria)の州都ジェノバ(Genova)風
バジルをペースト状にしたものをジェノバ風ペースト、ペスト・アッラ・ジェノベーゼ(pesto alla genovese)と呼ぶ。
ジェノベーゼはスパゲッティよりもリングイネを使った方が本場っぽい。 
alla siciliana
シチリアーナ。
イタリア半島南西に位置する地中海最大の島、シチリア島(Siciliaのこと。
シチリア島名産の茄子を使ったトマトベースのパスタを指す。
ノルマ風(alla norma)とも言われるが、これは「オペラの詩人」と言われたシチリア島カターニア(Catania)出身のオペラ作曲家ヴィンチェンツォ・ベッリーニ(Vincenzo Bellini:1801-1835)の名作「ノルマ」に由来している。
alla amatriciana
アマトリチャーナ。
ラツィオ州(Lazio)にある町、アマトリーチェ(Amatrice)風という意味。
トマトソースに豚脂身、玉ねぎ、ペコリーノチーズを使ったもの。 
Neapolitan
ナポリタン。
数あるスパゲッティ料理の中でも別格的存在。
こじんまりとした喫茶店や洋食屋にはあるのだが、よりイタリアらしい店に行けば行くほどその姿は見かけなくなる。
というのもナポリ(Napoli)どころかイタリアには「ナポリタン」(トマトケチャップを使ったスパゲッティ)は存在しないわけである。
そもそもトマトケチャップは1890年頃にアメリカで誕生し、その後明治時代に日本に伝わり、1908年(明治41年)に現在のカゴメ(株)が日本で生産をはじめた。
現在イタリアにトマトケチャップがないか、というとあることはあるのだが、ほとんど使われることはないのだとか。
トマトケチャップを作り出したアメリカではトマトケチャップを使ったスパゲッティ料理は存在はするが、それを「ナポリタン」と呼ぶのはある意味日本文化であり、ナポリタンは日本の洋食と考えて良い。
ではなぜ「ナポリ」なのか不思議なところである。
これにはいくつかの説があるがナポリは、現在のトマトソースに使われているサンマルツァーノ種トマトが誕生したということ、トマトソース発祥の地であるということが考えられる。
ナポリで誕生したトマトソースはその後フランスに伝わり「ナポリタン」と呼ばれるようになったというのが有力である。
では本場ナポリのパスタはどうかというと、やはりトマトの産地だけありトマトソースが主流だ。
イタリア語でナポリ風はナポレターナ(alla napoletana)と言い、トマトソースをベースとして肉や玉ねぎなどを入れて作るそうな。 

直訳型

「○○を使ったスパゲッティ」などとイタリア語で書かれると、イタリア語を知らない日本人からするとそれはパスタの料理名なのだと思ってしまいがち。
意味を知れば何が入っているか一目瞭然なので、分かりやすいといえば分かりやすいのだが。

vongole
ボンゴレ。
vongole アサリという意味。
ボンゴレ・ビアンコ(vongole bianco)とかボンゴレ・ロッソ(vongole rosso)など言う場合がある。
bianco は「白い」という意味で、白ワインを使ったものやアサリの出し汁を使ったものを指す。
一方 rosso は「赤い」という意味で、一般にトマトソースを使ったものを指す。 
peperoncino
ペペロンチーノ。
peperoncino唐辛子という意味。
ペペロンチーノというとニンニクというイメージが強いが、ニンニクはアーリオ(aglio)と言う。
ニンニクと唐辛子とオリーブオイルを使ったアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ(aglio olio e peperoncino)を日本ではペペロンチーノと呼ぶことが多い。
もっとも aglio olio e peperoncino はニンニクとオリーブオイルと唐辛子という意味。
日本ではそれをベースとして他の具材とあわせて「~のペペロンチーノ」と名付ける店も多数見受けられる。 
tonno
トンノ。
tonnoマグロという意味。
トンノは日本で言う「ツナ」のことを指すものだと誤解されている方も多いが、生のマグロでもツナ缶でもトンノに違いはない。
またマグロを英語では tuna と言うが、英語圏ではマグロ缶、カツオ缶ともに tuna 缶と呼ぶらしい。
quattro formaggio
クアットロ・フォルマッジョ。
quattro は数字の4、formaggio はチーズのことを指し、そのまま4種のチーズという意味になる。
たまにお店のメニューにこの名前が載っていることがある。
使用するチーズの種類はとくに決まりはなく、私個人的にはまったく種類の異なるチーズを混ぜたほうがまろやかで味わい深くなると思う。 
pomodoro
ポモドーロ。
pomodoroトマトという意味。
イタリア語でリンゴのことを pomo 、金のことを oro と言い、pomodoro の語源は pomo d’oro (金色のリンゴ)から。
トマトソースのことを salsa di pomodoro と言い、ポモドーロはトマトソースやトマトを使ったものに名付けられる場合が多い。 
basilico
バジリコ。
basilicoバジル(basil:英語)のイタリア語名。日本語ではメボウキといい、一般的にイタリア料理でバジルというとスイートバジルのことを指す。
パスタ屋でジェノベーゼとかジェノバ風と書かずに「バジリコ」と書いている店も多い。
melanzana
メランツァーナ。
melanzana茄子という意味。
やはりトマトソースとの相性は抜群。
揚げ茄子をオリーブ、ケイパー、ビネガーなどで味付けをした料理、カポナータ(caponata)はシチリア島(Sicilia)の郷土料理。
spinacio
スピナーチョ。
spinacioほうれん草のこと。
ほうれん草を練り込んだ緑色のパスタのパッケージによく見かける名前ですね。
とあるパスタ屋さんで「ポパイ・スパゲッティ」と名付けられたほうれん草を使ったメニューがあったのを思い出しました。もちろん、オリーブも入っていました。
acciuga
アッチューガ。
acciugaアンチョビ(anchovy:英語)のこと。
地中海などでとれるカタクチイワシのことだが、パスタ料理でアンチョビというとそれを塩漬けにして発酵・熟成させてオイル漬けにしたものを言う。
パスタはもちろん、ピッツァやサラダソースなど幅広く使われる。もっともメニューの名前にはアッチューガよりアンチョビと書かれている方が多い。
bottarga
ボッタルーガ。
bottargaカラスミのこと。
ボラやマグロの卵巣を塩漬けにしたもので、イタリアでも高級食材とされている。
スライスしたり、おろして粉末にしたものをパスタに使う。
ちなみに、日本のカラスミという名前は形が墨に似ていることから付けられたそうで、長崎が本場として有名ですね。
そもそも私はカラスミを頂いたことがないので、なんとも説明しにくい。
funghi
フンギ。
fungo とはキノコのことで、よく見かけるフンギ(funghi)とは fungo の複数形。
イタリアでよく食べられるキノコというと、マッシュルーム(champignon)やポルチーニ(porcini)、そして世界三大珍味であるトリュフ(tartufo)など。
日本のパスタ屋ではやはり日本でメジャーなシイタケ、シメジ、マイタケなどを使ったものが多い。
scampi
スカンピ。
scampi とは手長エビという意味。アイルランド南岸、ヨーロッパ西岸、地中海でとれる体長15cm~25cmほどのエビ。
日本ではアカザエビを代用として使うことが多い。アカザエビは房総半島から九州東部まで分布しており、体色が植物のアカザの若葉の紅斑に似ていることからこの名前が付いた。

1件のコメント

  1. メモりましたよ✌

    高校生のとき、イタリア料理のお店でバイトした時の料理名が。

    語源などのフランクな説明文で勉強になりましたよ。

    きょうから話の幅にちょっと*炭’をいれてみます。 少し鼻が高いですかな⁉
                グラッチェ ❣

    ブー
  2. 学校の調べ学習で使わせてもらいます❣️ほんとに色々な料理があるんですね!

    すとぷり大好き!

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