パスタだけでなく、すべての料理において重要な調味料が「塩」だ。
塩は、食品に塩味をつけるだけではなく、われわれ生体の電解質のバランスを調整したり、浸透圧維持のための重要な物質だ。
今でこそ塩は簡単に手に入るが、昔はそんなたやすく手に入るものでもなく、かなり貴重なものだった。
古代ギリシャでは、兵士へ給与の一部として塩(salarium argentum:塩貨幣)を与えていたらしく、これが英語のサラリー(salary:給与のこと)の語源となった。
中国では「鹹(かん)甘酸苦辛」を五味要素としており、特に塩味を意味する鹹(かん)を筆頭にしている。
これらから人間と塩は切っても切れない長いつながりがある。
そんな塩の大きな役割は塩味をつけることがまず考えられるが、それ以外にも我々は塩の特性を上手く利用してきた。
そんな塩の特性を列挙してみる。
パスタを茹でる時に塩を入れるのは、塩の一番の働きである塩味の付加である。
パスタそのものに塩味をつけることで、より美味しいパスタに仕上がるというもの。
あとは、たんぱく質の溶解と高温沸騰がパスタの茹で塩に関係する。
塩によって麺に含まれるたんぱく質が溶け、より粘り(つまりはコシ)のある仕上がりになるというものだ。
高温で沸騰させるとは、言うまでもなくお湯の温度が下がりにくなる。
たかが塩、甘くはないけど甘くみてはいけないってことだ。
さてはて・・・・ここまで書いたんだから、もうちょっと塩のことを調べてみよう。
アメリカ内務省鉱山局の調査によると世界の塩生産量のうち、
3分の2は岩塩・天然鹹水(かんすい)>などの地下資源で、残りの3分の1は海水資源だという。
岩塩とは海水が蒸発・堆積し鉱床となったもの、天然鹹水とは地下の塩泉や鹹湖などだ。
日本では岩塩が発見されることはなく、縄文時代から海水を土器で煮詰める素水焚(そすいだき)で生産された。
いわゆる塩田は奈良時代に入ってからのことで、海水を数回塩田に散布して、水分を蒸発させる揚浜式(あげはましき)>が主流だった。
江戸時代になると、塩の干満差を利用して海水を浜にひき入れる入浜式(いりはましき)が瀬戸内海地域で発展する。
1952年になると緩い斜面をつけた流下盤に海水を流し天日で水分を蒸発させ、竹枝を組んだ枝条架(しじょうか)から滴下させて鹹水を取る流下式塩田が成立する。
1972年以降になるとイオン交換膜法が開発されて、現在では塩田を使わずに海水から塩を精製している。
イオン交換膜法は陽イオンだけを通す陽イオン交換膜と陰イオンだけを通す陰イオン交換膜を交互に並べた水槽に海水を入れ、水槽の両端に電極を置いたものだ。
電極から直流電流が流れると、ナトリウムイオンは陰極に向かい陽イオン交換膜を通り抜け、塩素イオンは陽極に向かい陰イオン交換膜を通り抜ける。
そのために交換膜の間に濃度の濃い部屋(濃縮室)と薄い部屋(脱塩室)が生まれ、濃縮室から塩を採取するといったなんとも頭が痛くなるような手法である。
日本の製塩はこのイオン交換膜法が主流だが、国内生産以外にも天日塩や岩塩の輸入も多い。
古来から貴重であった塩は現在の日本でも同じで、一般の商品とは多少ことなり1996年までは専売制度において流通していたが、現在は1996年に制定された塩事業法という法律にしたがい安定的に供給され、私たち消費者の手に届くようになっている。
塩と言っても、その種類はけっこうあり、大きく分けると生活用塩と特殊製法塩にわけられる。 生活用塩は塩化ナトリウムの含有量が40%以上の固形物をさし、従来は日本たばこ産業(株)が販売してきたものを、現在では(財)塩事業センターが引き継いでいる。 特殊製法塩とは香辛料やにがり、ゴマやコンブなどの自然食品を混ぜ合わせたものや自然塩や岩塩などの特殊な製法のものをさす。